絶対零度の鍵
だが。


「よし、まぁ、わかっているならいい。で、俺は今から上の休憩室で仮眠を取るから、卓はこの子についててやってな。」


「は!?」


一瞬の内に、物分りの良い弟、崩れ去る。


「いやいやいや、それはないっしょ!?何かあっても僕じゃ対応できないし。」


そんな最悪な係は絶対に嫌だ。


僕はぶんぶんと首を振る。


「上に居るんだから、俺を呼べばいいだろ」


何言ってんだとばかりに、兄貴は片眉だけ上げて呆れたように俺を見た。



「そういう問題じゃ…」



「ふあーあ。じゃ、よろしくなぁ」



僕の必死の訴えを、椅子から立ち上がった兄貴は大欠伸ひとつで退けた。


しかも伸びをしながら。



「ちょっと待っ…」



何かを伝える前に、診察室のドアがばたんと閉まった。
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