絶対零度の鍵
「おーい、どうしたんだよー?っと、うわ…」


物音を聞きつけて目を覚ましたらしい兄貴が起きて来て、部屋の惨事を見ると絶句した。


僕は相変わらず頭がガンガンしているから、起き上がりたくても起き上がれない。言葉も発せないし発したくない。


むしろ目の前が真っ暗になってくれればいいのに、と思う。


そしてあわよくば、気絶している間に全てのややこしい出来事が解決していてくれたらと切に願った。


「…君、怪我は?起き上がって大丈夫なの?」


あぁ、兄貴。


僕は虚ろな目をしつつ、心の中で呼びかける。


そこにいる女はふつーの女じゃない。

人間じゃないという兄貴の見立ては正しかった。

美人だけど、おっかなくて気が強くてかなり怪力で、、、


そして―





夢見る少女ちゃん、だ。




兄貴の話はきっと通じないと思う―




そこまで念じると、僕は希望通り意識を失うことに成功した。
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