絶対零度の鍵
「…ねぇ、あの夜…君はあの公園に居たのに、なんで場所わかんないの?」


公園まであと50m程の所にある自販機前。

右京はなにがそんなに面白いのか、業者が中身を補充している様子をじぃっと見つめている。

業者のお兄さんはさぞかしやりにくいだろうな、と可哀想に思いながら、少し離れた電信柱辺りで僕は彼女が飽きるのを待っていた。

他人のフリができるものならしたいと願う中で、ふと疑問に思って訊ねる。

右京はちら、とこっちを見るが、すぐにぷぃっと自販機に戻した。


―ほんと、さっきから僕の話は無視だよな。

いいけど。

もう待っててやらねーから。


前に向き直ってポケットに手を突っ込み、歩き出す。

帰りにコンビニ寄ってアイスでも食おうかな。

もう、色々現実逃避したい。


未だに僕の心は収集がつかない。
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