絶対零度の鍵
公園の入り口まで来て、やっと後ろをそろっと振り返った。


「うわっ」


思わず仰け反る。


だって、すぐ後ろに彼女は来ていたんだから。


ちょっと…いや、かなり、…近い。



それに、なんの気配もしてなかったし、足音もなかったように思う。

どうせ自販機のとりこにでもなっているのかと思っていた。


「驚かせないでよ」


八つ当たりすると、右京は何も言わず得意気にふふん、と鼻で笑った。


「ここから見えるだろ?あの小山のてっぺんだよ。」


もう何も気にするまい、と心を無にしながら、山を指差す。


右京もそっちを見る。


「…へえ……」


どんな気持ちでいるのか、さっぱり読むことのできない表情だった。


まぁ、最初から彼女が考えていることは、僕には何ひとつわかりゃしないんだけど。
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