絶対零度の鍵
どうも山に登りたいようだったので、僕はそこまで行ってあげた。

狭いけれど開けている山のてっぺんは、正に真夏の灼熱地獄で、僕は黒いTシャツを着ていることを後悔した。


「…暑いね」


話しかけても右京は上の空で、何か考え込んでいる様子だった。

だから僕も黙って、一刻も早く帰れますようにと願う。

額から落ちる汗が頬を伝う。

日光を遮れるものがないこの場所は、その汗さえも一瞬で蒸発させてしまうんじゃないかと思う程暑い。


「…クミ。」


暑過ぎてぼぅっとし始めた頃、やっと右京が口を開いた。

喉がカラカラで声を発することのできない僕は、首だけを動かして彼女を見た。



「ここは、地球なのね?」



落ち着け、僕。


彼女の突拍子もない問いかけは、今に始まったことじゃない。
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