絶対零度の鍵
「尭…」


これは、まずい展開かもしれない。


僕は右京の後ろに並んでいたのだが、右京とは他人のフリをしようと決めて、尭に身体ごと振り向く。


色々説明しなきゃいけないのが面倒くさい。



「なんで先行っちゃうのよ!?」


僕の傍まで来ると、膨れっ面で尭が言った。


別に約束したわけじゃないけど、朝、尭とは大抵一緒に行くことが多かった。

でもだからといっていつもってワケでもなく。

こんな風に僕が勝手に早く出る日もあるんだけど。

その時は必ずと言って良い程、尭はこうやって怒る。


僕には意味がわからない。


「…ごめん」


だけど、とりあえず謝る。


「それに!なんで土曜日来なかったの?予備校!先生呆れてたよーまたかって。」


あ、そういやそうだった。


「怪我してたから」


頬に貼ってある湿布を指差して見せた。


その瞬間尭は、あ、と口に手をあてた。
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