絶対零度の鍵
「やだ、気づかなかった!どうしたのよ?!」


急に尭は心配そうに僕を覗き込む。


そこへ―


「回転椅子からおっこっちゃったんだよねー!」


ひょっこりと僕の背中から右京が顔と口を出した。


固まる尭。


タイミング良く(悪く?)ホームに入ってきた電車。


「ほ、ほら、乗るよ。」


僕は2人を急かしてぎゅうぎゅう積めの電車に押し込む。


とりあえず僕は高校の最寄の駅に着くまでの時間は、平和な日常を送れるとほっとした。


今日ばかりは満員電車万歳だ。


この際、脇にちらっと見える尭の刺すような視線には、気づかないフリをしておこう。
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