絶対零度の鍵
注目の的になること必須っていうか。


もう、仕方ない感じだよね。うん。


自分で自分を慰めながら、これから待ち受ける悲劇にメンタルを整える。


「望月ぃ。お前、右京ちゃんと付き合ってんのかぁ。もう一度きっちり答えろ!」


しばし沈黙を守っていた大男が、口を開いた。


僕は項垂れる。


付き合ってるなんて一言も言っていません。なんて言えずに。



「付き合ってないよ」


か細い声で、僕が答えると、小松は怒った。


「男らしくねぇーな。男だったら潔く認めろ!」


僕、容疑者が『はい、僕がやりました』って言っちゃう心境が、ちょっとわかった気がする。


こうやって冤罪はつくられてくんだ、きっと。


バスケ部の溝端は、にやにやしながら、こっちに一番近い扉によっかかって、聞き耳を立てている。


ほんと、悪趣味な奴だぜ。
< 182 / 690 >

この作品をシェア

pagetop