絶対零度の鍵
目が覚めたら痛いのかな。


そんな考えが頭を過ぎり、僕は現実と向き合うことを躊躇う。


そこへ―


「ほら!クミ。いまのうち!」


静寂を破って、底抜けに明るい声が響いた。


「は?」


思わず頑なに閉じていた瞼を、あっさり開いた。


僕を待ち受けている光景は、僕の予想を遥かに上回って―


異常だった。


「え?」


これから先、僕が発する言葉全てに疑問符をつけたい気分だ。


きっと、夢を見ているんだろう。


僕はもう一度強く目を瞑った。


「何やってんのー?早くー!そのうち動き出しちゃってもいいの?クミ鼻血ぶーだよ」


夢ならば、覚めてくれ。


そして、この素っ頓狂な少女ごと失かったことにしてくれませんか。


誰に願うでもなく、強く思った。
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