絶対零度の鍵
「どういうことなの?」


僕は諦めて目を開けて、辺りをくるりと見回した。


僕の前の小松は、僕の鼻の先まで拳を近づけ、カーブしたままの姿勢で一時停止していた。


ひょい、とその脇に僕はどいて、体育館を覗く。


バスケ部の奴らも、扉に意地悪く寄りかかる溝端も、やっぱり止まっている。


五月蝿い位の蝉の合唱も、


生ぬるく吹いていた風も、


ギラつく太陽さえも、


静止しているようだ。


「空間の流れをちょこっといじって止めただけだよ」


なんでもないことのように、右京は笑った。


僕は、、


残念ながら、笑えない。


しゃれにならん。
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