絶対零度の鍵
あぁ、これは夢なんだ。


悪い夢なんだ。


「僕は、本当はノックアウトされて意識が吹っ飛んで、こんな夢を見てるのかな。現実は保健室のベットで寝てるのかな」


「クミってやっぱり馬鹿なんだね」


ぼやく僕に、心底呆れたとでも言うように右京がはぁ、と溜め息を吐いた。


「これのどこが夢の中なのよ!そのでかい男にはちょっと痛い目に合わしてやりたいけど、クミが怪我するのはかわいそうだから仕方なく加担してあげたのに。」


偉そうにふふん、とふんぞり返っている。


どこがって。


全部が夢みたいな出来事なんですが。


言ったって無駄なことを空気で感じた僕は黙っているけれど。


「とにかく!ぼっこぼこにしてやって!その男ったら、こともあろうかあたしに貢物を持ってくる素敵な人たちを追い散らしやがったんだから!」


右京は鼻息荒く、シャドウボクシングをしてみせた。

食い物の恨みは恐ろしいもんだなぁ、と他人事のように思った。

実際の所、他人事なんだけど。
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