絶対零度の鍵






暫くすると、雨は突然ピタリと止む。



先ほどの豪雨が嘘だったかのように、青空が顔を出した。



こんなことも珍しい。



灰色のずっしりと重たそうな雲に覆われている。



それがこの国の『晴れ』の日、である。



恐らく誰もがこの異変に気づいているだろう、そんな中で―




「ふぇーん…」




情けない声を出しながら、来た道を戻る片翼の姿が、森の上空にあった。
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