絶対零度の鍵
金色の猫
小松の騒動から数日して、夏休みに入った。
そのせいか噂は思ったよりも広まらず―多少の物足りなさを残しつつ、学校という媒体は息を潜めたのだ。
「卓。お前、ちゃんと勉強してんの?」
久々に実家に顔を出した兄貴が、アイスをかじりながらぼへーっとテレビを見る僕に心配そうに訊ねた。
テーブルは嫌だ。
ソファも暑い。
だから床。
クーラーつけたいんだけど、親の許可が出ない。
部屋に籠もってこっそり涼んじゃおうかな。
「してるわけないでしょ!全く。おにいちゃんの爪の垢煎じて飲ませてやってよ。」
おかんが昼食の後テーブルを布巾で拭きつつ答える。
「来年は受験生だろ?期末試験の結果は?」
「あら!そういえばどうだったの?」
やばい。
雲行きが怪しくなってきた。