絶対零度の鍵
「右京…」


しわがれた声に、僕はどきりとする。

そして周囲を見回した。

僕、右京、猫以外誰もいない。


でも僕は信じることができない。

だって声を発したのは、金色に輝く猫しか考えられなかったから。


僕の頭も相当イカれたのかな。


ま、イカれていたとしたって今初めてそうなったわけじゃない。



「鍵師。あんた、温度師に捕まってたの?」



この勝ち気な女の子に会ってから、僕の頭はずっとイカれっぱなしだ。



「…まぁ、落ち着いて話そう。右京…」



ゆったりとした口調で言うと、あろうことか猫は慣れた仕草でどこからか煙草を取り出し、口にくわえた。


多分、長い毛の中に隠していたんだと思う。


「嘘だろ…」


開いた口が塞がらないとはこのことだ。
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