絶対零度の鍵
「ワシと会えた事で、右京の緊張が少し緩んだのだろうな。気力だけで堪えてきた分、少し緩んだ瞬間に、身体が限界を告げたんじゃ。」


鍵師はふぅ、と溜め息を吐き、僕から目を離して床に目をやる。


「ワシの仕事は鍵師で、その名の通り鍵を作る。今まで何度も地球が熱を上げるたびに応急処置として使用してきたのが、【絶対零度の鍵】じゃ。右京はワシが居れば時間稼ぎにはなると考えておる。だが…」


「?」


言い淀み床を見つめ続ける鍵師は、項垂れているようにも見える。


「だが、材料がなければ作れない。あっちの世界に戻れたとしても、全て獣に破壊されてしまった。残ってもおらんだろう。貴重な幻雪の結晶…。そして右京の様子を見ると、弟の左京とも意志の伝達が図れないようだ。なす術がない。」



それは、つまり。


「このまま、滅びるのを、黙ってみているしか方法はないと?」


鍵師は肯定はしなかったが、否定もしなかった。


ただ、黙って、床を見つめたままだった。



「僕は、、、何ができるでしょうか?」



気付けば、言葉が勝手に零れ落ちていた。
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