絶対零度の鍵

「クミ!!!」


僕の質問に鍵師が答えようと口を開いた瞬間に、


僕の後ろのソファで眠っている筈の右京が、僕を呼んだ。


驚いて思わずびくっとなって、振り返ると、右京は目を瞑ったまま手を宙に伸ばして―


「行こう」


と言った。


誰かの手を掴むように掌を握ると、ゆっくりと下ろし、そして寝息を立て始める。



ね、寝言か。


人騒がせな。



ノミのハートをばっくんばっくん言わせながら、頼りないヒーロー志望だなと自分に苦笑する。


それにしたって一体どんな夢を見て、僕は連れて行かれることになったんだろう。


恐ろしい。
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