絶対零度の鍵
紫の煙も店を取り巻いていない。
考え込む格好をしながら、閉まっている店の前に突っ立っていると、後ろから声が掛かる。
「あら、右京ちゃん。今日は何回も来てるのねー」
振り返ると、鍵屋の向かいにある氷細工工房のおばちゃんがこちらを見ていた。
元(もと)い、中身はおばちゃんだが、外見は焼いて膨れた餅に手足が生えている。そんな感じだ。
「んー、そーなんだけどぉ。今鍵屋開いてないみたいなの。」
右京は頬をぷっくら膨らませつつ、鍵屋を指差した。
「えー?そうかい?どれどれ」
腰らしき所に手を当てて、おばちゃんが鍵屋を覗いた。