絶対零度の鍵






―『鍵師さぁ、今ここに住んでんの?』


宣言通り、ちょっと眠っただけで、全回復したのかと思うほど右京は元気に起き上がった。


そして、起き上がるなり鍵師にこう訊ねたのだ。


鍵師は右京と同じように温度師に突き落とされてから、地球に着いた際、幸いなことに怪我はしていなかったようで。


とりあえず何処に来てしまったのかがはっきりする迄は、どこかに隠れていようと思ったらしい。


運の良いことに、使われていない工場を見つけ、そこに潜みつつ、この街を観察していたという。


そして、気づく。


自分の姿はどうも受け入れられないようだ、と。


話す言葉も違う。


それで、鍵を使った。



『ワシはいつもいくつか鍵は持ち歩くことにしているんじゃ』


鍵師はそう言って、鍵の束を見せてくれた。


鍵って言うから、文字通り鍵の形を想像していた僕はそれが間違いであることに気づく。

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