絶対零度の鍵
「本当だ…おかしいねぇ。さっきまで居た筈なんだけど…」
首を傾げつつ、おばちゃんは右京を置いて、店をぐるり一周し始めた。
おばちゃんが帰ってくるまでここで待とうと、右京はしゃがみこんで土に落書きを始める。
「幾らずつ返したら一番得だろう…なんとか無利子にしてもらえないかなぁ…」
ずらずら書いたのは数字の羅列。
だが実際の所、とうに計算式なんてものは彼方に飛んで、脳は現実逃避を発令していた。
そこへ―
「右京ちゃん!」
少し慌てた様子のおばちゃんが、右京の元へと小走りに戻ってきた。