絶対零度の鍵
壁掛けの時計の針は、とっくに午前1時を過ぎている。


束の間の沈黙だったのだろうが、じれったく感じる頃。



「言い伝えられているかなり昔の話じゃ…」



鍵師が口を開いた。



「そうじゃな。今の温度師の3代前の話だそうだから。。3500年前くらいの話になるのかの。」



恐らく長いこと仕舞われてきたであろう記憶のかけらを拾い集めるように、鍵師はゆっくりと話し始める。



「温度師は王たちと違い、古くから伝わる温度師の一族の中から選ばれる。そして選ばれし者は母の胎に宿った時から定められておる。それは何者にも変えることはできない。勿論、そのために育てられるのだからそれなりに心定まっておる。しかし―様々な拘束がついて廻り、それに我慢ならぬ者も時として出てくる。」



誰もが、鍵師の言葉に耳を傾けている為に、時計の針の音がやけに部屋に響く気がする。



「ちょうど、今の温度師の―…曽祖父に当たる温度師がそうじゃった。」

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