絶対零度の鍵
「その…子の…名前、は?」




喉が、からからで声が上手く出ない。


もう、老人がどんな顔をしているかを伺う余裕もない。


最悪の結果だけは、どうか耳に入ってこないで欲しいと、ひたすら願った。




「―翠」




少しの間の後、老人は愛でるように呟く。





「私の、、孫です」




蓮貴の手から、青いグラスが落ちる。



パリン、と音がすると、直ぐ人が片付けにやってきた。



「大丈夫ですか?」



老人が、驚いたようにこちらを向いたが、気遣うことはできなかった。


蓮貴は首を振りながら、よろよろと後ずさり、そして、方向を変え、広間から走って出て行った。
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