絶対零度の鍵



「嘘だよな?」



無駄だとわかっていながら、蓮貴は土を思い切り殴る。


「嘘だっ!!」



自分の思いの丈をぶつけるように。





あの時。




もしも、自分が気づいていれば。



知っていたら。



動いていれば。



温度師が、死ななければ。




自分が、




温度師で、




なかったら。




翠の傍に、居られたら。




「ちくしょ…」




ぼたぼたと黒い染みが殴った土の上に出来ていく。
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