絶対零度の鍵



「何が温度師だ…」



温度師は―


世界に必要な者なのだ。


温度師が不在になると、空気は揺るぎだし、均衡は保たれなくなる。


小さい頃から言い聞かされてきた。



『お前は、世界を守る選ばれし者』と。




「違う…」



土をぐっと握り締め、蓮貴は力なく首を横に振った。



自分の守りたかったものは、そんなものじゃない。



そんなものを守りたかったわけじゃない。




ただ、一人。



ただ君だけ。



君の笑顔だけを。



守りたかったのに。



この手で。
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