絶対零度の鍵
覚醒
「それで?どうなったの?」
暫くの沈黙の後、右京が鍵師に訊ねた。
ソファにあったクッションをぎぅっと抱き締める彼女を見て、少し気持ちが和んだ。
僕にとっては余りにも奇想天外な話。
そして、やるせなくなる話だった。
「…伝えられていく物語というものは、色々脚色されるもの。全てが真実かどうかは知らんが―」
長いこと語った鍵師の声は、少しざらついている気がする。
「その本に書かれていること、つまり温度師の禁忌を犯した為、世界を揺るがす大惨事になったらしい…既の所で食い止めはしたらしいが…」
そこまで言うと、鍵師は立ち上がって軽く伸びをした。