絶対零度の鍵


ぐるぐるする。


目を閉じると、すぐに睡魔が僕を襲う。


深い眠りだろうから、ただただ意識を失うように眠れるのだろうと思っていたのに、僕は夢を見た。


真っ暗な闇の中に咲く、一輪の白い花。


そこに佇む、漆黒の髪の少年。


華奢で美しすぎるその少年は、どこか冷たさと、そして近寄りがたさを放っていて、


僕は少し離れた場所から、見ていることしか出来なかった。


頭のどこかで、この少年が、鍵師の話に出てきた少年なのだろうとわかっていた。


肝心な顔が、俯いて花を見つめているせいでよく見えず、少しじれったい気持ちになる。


すると、生温かい風がひゅっと吹いて、彼の前髪を揺らした。




なんだか、どこかで―




一瞬だけ見えた横顔。


僕は彼の事を知っている気がした。
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