絶対零度の鍵


そして―



「うわっ」

「きゃっ」


ドサッ




大きな音に振り返ると、押さえつけていた力の主が消えたことで、首を締め上げられていた二人が解放されていた。



肩で息をしてはいるが、大丈夫そうだ。



僕は安心してほっと息を吐いたが、直ぐに蓮貴の方へと向き直った。



しかし。





「?!」




蓮貴は、もうそこには居なかった。




世界は光を取り戻し、夕暮れになって。



周囲はオレンジに染まり、温度は高い。



いつも通りの、公園の中にある、小山。



何事もなかったかのように、全ては元に戻っていた。



ただ。




「花が…」




幻かと思っていた白い花。



手折られたのだろうか。



その茎だけが、ゆらゆらと風に靡いていた。



『お目覚めになりましたか?』



最後の星に選ばれし温度師。



彼は、目覚めてしまった。
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