絶対零度の鍵
鍵師の抑揚のない声が、やけに胸に響いた。
「あ、兄貴はっ、そんなことするような人間じゃないっ!」
動揺を隠せなくなった僕は思わず叫んでしまう。
「クミ…?」
そんな僕を驚いたように、右京が見つめた。絞り出された声は疲労の為か掠れていた。
「…温度師の言っていたことは真実だろうと思う。タクミに兄は最初から居ない筈じゃ。」
鍵師はちょうど木陰になっている芝生の上にちょこんと行儀良く座る。
「そんなこと言われたって、信じられるわけないだろう!?アレは、望月透って言う、正真正銘僕の兄貴だよ!」
優しくて、格好良くて、頼りがいのある、いつでも一番の―
僕の兄貴なんだよ。