絶対零度の鍵
「クミ…クミのお兄さんは、ちゃんと、クミのお兄さんだったんだよ」
右京は立ち上がると、ふらふらとした頼りない足取りで、その場に座り込んでいる僕に近づく。
「私を助けてくれた時、確かにお兄さんに力は感じられなかった。だから、クミのお兄さんとしての記憶はちゃんとある筈だよ。ただ今は、温度師によって古い自分を起こされてしまったってだけだと思う。」
膝を抱えてうずくまる僕の肩に、右京はそっと手を置いた。
「だから、、クミのお兄さんは本当に居たんだよ。大丈夫。」
いつもは適当な彼女。
ふざけてばかりの女の子。
破天荒で馬鹿力。
空気は読めない。
なのに今、慰めてくれているらしい。
僕に気を遣って。