絶対零度の鍵



「クミ…クミのお兄さんは、ちゃんと、クミのお兄さんだったんだよ」



右京は立ち上がると、ふらふらとした頼りない足取りで、その場に座り込んでいる僕に近づく。



「私を助けてくれた時、確かにお兄さんに力は感じられなかった。だから、クミのお兄さんとしての記憶はちゃんとある筈だよ。ただ今は、温度師によって古い自分を起こされてしまったってだけだと思う。」




膝を抱えてうずくまる僕の肩に、右京はそっと手を置いた。




「だから、、クミのお兄さんは本当に居たんだよ。大丈夫。」




いつもは適当な彼女。



ふざけてばかりの女の子。



破天荒で馬鹿力。



空気は読めない。



なのに今、慰めてくれているらしい。



僕に気を遣って。

< 346 / 690 >

この作品をシェア

pagetop