絶対零度の鍵
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旅立ちの朝は、誰もがうきうきするような―
雪空だった。
「いやー、右京の門出を祝うかのような良い天気だな!」
厭味ったらしい口調の左京をギロリと睨むが、当人はそんなの慣れっこで気にもならない。
今日ばかりは、右京もそれ以上文句を言う気にもなれず、小さく溜め息を吐いて、王座の前に跪(ひざまず)く。
「それでは、この右京。王のご命令により、鍵師の追跡に向かわせていただきます。」
右京がそう言うと、王は立ち上がって、右京の頭の上に手をかざした。
目を閉じて、すっと息を吸うと、細く吐き出す。
「これでどこの空気にも順応できようぞ。幸運を祈る。」
王が幾分頬を緩ませて、言葉を発する。
恐らく、微笑んだようだ。