絶対零度の鍵



 「…ですので、我が国では手のつけられないこの星のとりあえずの危機を防ぐ為に、いつものように、【熱界雷(ねつかいらい)の鍵】を鍵師に造らせることにしました。温度師は直前に来ていますので、よくわかっていたと思います。」




微かに温度師への怒りが籠められている。




「このまま行けば、王族は命を落としてしまいます。そうならない為にも【熱界雷の鍵】はとても重要なものでした。それなのに、鍵師が襲われる事態に。聞けば、雨が降ってきたというのです。そしてそれに混じって黒い襲撃者が現れた、と。灼熱で雨は降りません。ですからそれだけで国はかなりのパニックに陥りました。その上―」






悩ましげに、一息吐く鳳。




「雪が、降りました…雪、なんて、灼熱ではあり得ない。民は大混乱でした。」






疲れきったように見える表情は、灼熱の国の騒動はまだ鎮静化していないことを物語っている。





「そして、その直後から現れたのが、白い怪物でした。」





この会議に参加している者のほとんどが、身を固くしたのがわかる。





白い怪物は、右京に致命傷を負わせた生き物でもあり、灼熱から鍵師を奪った存在でもある。



まだ新しいその記憶を、各々が鮮明に思い浮かべたのだろう。
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