絶対零度の鍵
「鍵を奪われた鍵師はすぐに新しい鍵を造りにかかろうと申し出てくれましたが、謁見の間で会ったが最後、鍵師の姿は二度と見ることなく、、後には白い獣によって破壊された鍵屋があるのみ、でした。もちろん、材料も使い物にならない状態にされていました。」





あちこちで、言い様のない苛立ちや、落胆の溜め息が漏れた。




「この出来事は国を、ひいては世界全体を揺るがす大惨事になりかねない。私共は、隣の国であります、極寒の国に使者を使わすことにしました。こちらでも何か起こっているのではないかと考えたからです。ですが―」




ここで鳳は一度軽く目を伏せ、再び開いた。




「使者は我が国を出ていってから、待てど暮らせど帰ってきませんでした・・・」




がっくりと力無く垂れ下がった肩は、無念な思いを十分すぎる程に伝えてくれる。
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