絶対零度の鍵
「彼が居なかったなら、即ち、右京と鍵師を失っていたとすれば、我々に成す術は残されていなかったでしょう。まず、ここで彼に感謝を述べたい。タクミ、ありがとう。」



ここまで真面目な左京を、僕は初めて見た気がする。


呆気に取られながらも、僕に向かって頭を下げる左京に、軽く会釈した。



周囲の同様も静まり、各々納得したような、していないような、複雑な表情をするのみだ。



「そして―我々は比較的直ぐに、温度師とも接触することになりました。」



一度静まった筈の会場に、ひそひそ声が飛び交う。




「温度師の狙いは、すべての世界を終わらせ、自分で支配すること―つまり、温度師の禁忌を犯すことでした。しかし、それには力が足りない。彼の計画は実に緻密で―、数千年前に行方不明になった温度師がまだ存在していることを、知っていたようでした。つまり、その力を目覚めさせることが、第一目的だったようです。」




いつしか、小さな囁きは普通の会話ほどに発展していた。




「…静粛にされよ。」




とうとう、極寒の王、鳳凛の声が冷たい刃のように広間に響き渡った。
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