絶対零度の鍵
「げ、それ本気?」



左京がげんなりした様子で訊ねた。



鍵師は何も言わず、面白そうに右京を眺めている。




「あたしは、王様が好き。ここが好き。この仕事が好き。それに加えて地球も好きよ。だから、クミ、安心して。あたしがクミの地球を守ってあげる!」




自信満々に言い放つ、右京は格好良い。


どっかのヒーローみたいだ。



非力な僕の助けなんかきっと必要ない。


それは以前鍵師にも言われたことだ。




「して、タクミはどちらでそれを見届ける?」




地球に戻って、いつも通り平凡な毎日を過ごしながら、自分は傷つくこともせずに、ただ待つことも選択のひとつだろう。




「僕は―」




僕は目の前の事から逃げるのは、得意だ。



けど。




僕はまだ、ヒーロー志望をやめちゃいない。





「この、世界で、見届けたいです。」




3対の視線がじっと注がれる中、僕は自分の進む道を、自分で決めた。

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