絶対零度の鍵
地下牢と聞くと、僕は冷たくて暗くて悪い人ばっかりで、アルマイトのお皿があって、牢屋の隙間から悪い人たちが手を伸ばしてくる―そんなイメージがあるんだけど。


実際行ってみると、そんな僕の予想はきれいさっぱり払拭された。



階段を下りきった所は暗いと思いきや、温かい光があちこちから射し込んでいる。

光源はちりばめられている、地球で言う電気みたいな役割をするものなんだと思うが、桁違いに明るくて強い。


照らし出されている廊下は琥珀色に輝いていて、その両脇にずっと続くドア。


いうなれば、ホテル、みたいな感じ。



「ここ、、何?」



右京は階段を下りる手前でスピードダウンし、立ち止まってくれたにも関わらず、僕はまだあの速度に乗っているような感覚でふらふらしている。



「何って…さっき言ったじゃない。地下牢、よ」



呆れた笑いを漏らし、右京が答える。



「ここに、悪い人が捕まったら、閉じ込められるの?」



俄かには信じ難い。



「地球の牢屋っていうのがどんなものか、あたしは知らないけど、こっちの牢屋はこういうものよ。そもそも悪いことする者は己の力が強すぎて制御できず暴走したってパターンが多いの。」





つまりは、悪意を持って悪さをする者は居ないということらしい。


< 440 / 690 >

この作品をシェア

pagetop