絶対零度の鍵
「お前、、信じるのかよ?」



超現実的な男に、僕は念のため訊ねる。



「半、半かな。でも、美人に頼まれたら仕方ねーよ。それに―」



こいつやっぱり女に関しては阿呆だ。



「それに?」



僕は呆れながら先を促す。



「あの谷が地球じゃ有り得ない形状をしていたのと、谷付近に居た奴等の言葉が最初全く理解できなかったのに、丸い玉みたいなのを取り出して俺達に振りかけた瞬間、言葉がわかるようになった現象は実に興味深かった。夢にしても面白い。」




多分、警備隊の者たちが、適応の鍵を使ったのだろう。



でも、右京のかけられている適応の術もまだ機能しているようだから、今さっきの会話は一体何語で行われていたのだろうと、急に気になりだした。



ま、なんにしたって、溝端は面白そうであれば、何でも良い様だ。



もう、こいつはこのままでいいや。



「で、尭はどうするの?」




クッションみたいなものをぎゅっと抱え込みながら、黙っていた尭に訊ねると、尭は僕を困ったように見た。



「私、は…家に…帰りたい…」
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