絶対零度の鍵
あー、なんでもっと筋トレしなかったんだろう。
変なとこで後悔の念が押し寄せる。
僕はスポーツはできる方だが、トレーニングなんてしていない。
むしろ、没頭するほど、僕は何かに夢中になることがなかったんだから。
パキンッ
何かが外れた音がして、蝶番がまたひとつ奈落の底に落ちていく。
キラッと光るそれは、なんとなく虚しさを感じさせた。
「ちくしょ…」
びりびりとする腕に指に悪態を吐く。
もう、駄目かもしんねぇ。
落ちたら痛いのかな。
あ、でも、その前に余りの高さに気を失うか。
じゃー、まぁいいか。
だけどちょっとだけ。
この世界の行く末を。
見たかったような気もするな―