絶対零度の鍵
蓮貴に文句があったって、誰もこの凄まじい風の中、掴みかかることは愚か、動くことだってままならない。

僕は風は感じないけど、動くのはやめたほうがいいということは、なんとなく分かる。




ぴゅうぴゅうと風の音が聴こえる中で、蓮貴が一瞬僕のことを見た…気がした。





「?」





確信が持てずに、僕は目を凝らして蓮貴を見ようとする。



が、蓮貴はすぐに目を伏せて、右掌を広げる。



そこに左手の人差し指と親指を、ちょうど時計の針のように重ね合わせた。






あれは―。




確か、以前、僕を小松から助けるため、右京が時を止めた際にも、あんな仕草をしていたような―




「時を止めようとしているの…?」





僕が呟くと、右京が首を傾げた。





「止める、意味がないわ。ちょっと、誰か王を呼んでこれないかしら…こいつと戦うには頭数が必要なのに…」




確かに。




じゃ、一体何をしようとしているんだ?
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