絶対零度の鍵
もう、風の音も、右京の声も聴こえない。



みんなの声も、聴こえない。



極寒の国なんかも見えない。



ただ、あるのは深い闇。


けれど、不思議と怖くはない。




段々と落ちていっているような感覚なのに、それすらも心地よい。




ん?



時折ちらちらと見える、あの白いのは、何だ?





あ、花びらだ。




いつかの―



あの、花の。




鍵師から聞かされた、温度師の物語に出てきた―




大切な。



大切な、白い、花。
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