絶対零度の鍵
しっかりと目が開けるようになって、最初に飛び込んできたのは青い空だった。

目だけ下に動かすと、やや勾配のある芝生のようなものが見える。


と、いうことは。


恐らく、自分はちょうど、緑の土手に囲まれた窪みのようなところに居るのだろうと察することができた。



次に、左右に目を動かしてみる。




「!!!!」




右側に向けた所で、僕の目はぴたりと止まった。




僕のほんのすぐ脇で。




漆黒の髪の青年が、こちらを見つめていたからだ。




その手には、今読んでいたのだろうか。


大きな本が開かれた状態でのっかっていた。



胡坐をかいているような姿勢で、彼は固まっていた。




同じように僕も(まぁ、目以外は自由が利かないんだけど)完全に静止している。



チチチ、と何かの鳥の囀(さえず)りだけが、のんびりと流れた。
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