絶対零度の鍵
やがて青年は、警戒心を露わにして口を開く。



「お前…誰だ?」




見覚えの無い場所で。


見覚えの無い、男。



僕は先程からずっとやっているように、自分の記憶を探る。



どうしてだっけ。


なんでここにいるんだっけ。


それから、えっと、僕は。



僕の名前は―



「見ない顔だが、この村の者か?」



訝しがるように眉間に皺を寄せる青年の眼光は鋭い。





「…わ、からない…」





擦れた声で呟くように答えるが、途端に激しい眩暈が僕を襲う。


気持ちが悪い。


靄がかかったように、何も思い出すことが、できない。



吐き気がする。
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