絶対零度の鍵
「―右京?」




頭を抱えたままの姿勢で、相手を見ることなく言葉を発していた王が、ぎろりと後ろを振り返る。




「は、、はいぃ」




王の瞳が怒りを湛える時、うっかり目を合わせてしまおうものなら、マグマに飲みつくされてしまうかのような錯覚に陥ること請け合いだ。



お口にチャックしました!という動作をして右京はぎゅっと目を閉じた。




「―今すぐ。鍵屋に行って絶対零度の鍵を作ってもらっておいで」





一見9歳位にしか見えない少女の齢は、優に500を越えている。



長い間この国の主として君臨するこの王が出した命令。



それは、「あそこのスーパーで卵買ってきて」という位に、



ここ最近、非常によくある内容だったのだが―









物語は、ここから始まる。
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