絶対零度の鍵
「ここは温度師の一族が住む村だ。」



蓮貴の言葉に、老婆が言っていたことを思い出す。



「あぁ、確か…玄、さんが、、術とか、次期温度師の家とかって言ってましたけど…」



蓮貴が頷く。


「皆少なからず、力を持っている。大体は役に立たん。とりわけ女はな。」



言いながら、蓮貴は近くに落ちていた木切れで地面に何か書き始める。



「だが、一際力を持つ者がある一定の期間で母親の胎に宿る。それが温度師として、選ばれる。」



つまり。



「今度は蓮貴が選ばれたってことですか?」




蓮貴はそうだ、とまた頷いた。




「すみません…僕、わからないんですけど…温度師って、、一体何なんですか?」



てっきり玄にされたように、呆れ顔をされるのかと思ったが、蓮貴は地面に顔を向けたまま、



「温度師には、空間から空間に移動し、様々な場所の秩序を保つ勤めがある。」



淡々と答えた。
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