絶対零度の鍵
「じゃあ…蓮貴は凄いんですね。偉い人なんですね。」



とにかくすごい力を持っているのだということはなんとなくわかった僕は、思わず呟いた。



「一体、どんな力なんですか?術ってどんな…」



再度質問しかけた所で、蓮貴の手から枝が落ちた。



カラリと乾いた音がした。




「……欲しくて、手に入れたものじゃないんだ。」



遮るようにして、落とされた言葉は、少し物悲しく聞こえて、僕は立ち上がった蓮貴をはっとして見た。




「蓮貴?」




無言になった蓮貴が地面に書かれた線に向けて、手の平を翳すと、線が吸い付くように伸び上がる。



それを掴むようにして取り上げ、ゆっくり崖の向こうに放すような仕草をした。



その途端、だった。
< 517 / 690 >

この作品をシェア

pagetop