絶対零度の鍵
今まで、ぽかぽかと晴れていた空は一変して濃紺に染まり、冷えた空気がたち込める。
バラバラバラと固いものが落ちるような音と、自分の肩に何かがぶつかった小さな痛みに首を傾げて見ると。
白い塊が降って来ていた。
「雹…」
唖然として、呟く僕を尻目に、蓮貴はさらに手を引っ繰り返した。
と。
一瞬にして雹が消える。
先程までの天気の変化が嘘だったかのように、春らしい天気に逆戻りしていた。
けれど、雹は確かに原型を留めたままで、僕の周囲に散乱していた。
そのうちの一粒を取り上げると、あっという間に溶けた。
僕は驚きの余り、暫く声を失う。
目の前の、青年の力が、空間を制御するということの意味を悟ったからだ。