絶対零度の鍵
「…凄い…」



やっとのことで、それだけ言うと、座り込んだままの僕を蓮貴が見下ろした。


が。


彼は達成感や、優越感など微塵もない表情をしている。



「どうしたんですか?普通それだけの力があったら、見せびらかしたくなりませんか?」



僕は自分の中の興奮を抑えることなど出来ずに、蓮貴に同意を求めた。



しかし、返って来た答えは、僕と彼の間には温度差があるということを示していた。



「普通って…なんだ?」



悲しげに吐かれた言葉に、僕は首を傾げる。



「普通じゃないんだ、俺は。」



余りに忌々しげに言うので、僕は二の句が次げない。



「こんな力、要らない…普通の者で良かったんだ…。誇り高き力じゃない…」



言いながら自分の右手を左手で掴む。


爪がくいこんでいるのではと思うほど、強く。



「呪われた、力だ…」



青年の抱える大きな痛みが、何故か僕には、手に取るようによくわかる気がした。

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