絶対零度の鍵
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先日蓮貴と歩いた道を、僕はひとりで歩いた。
ちょうど昼を少し過ぎたばかりなせいか、こないだのように畑を耕している人や田んぼに出ている人は見かけなかった。
空は今日も青く澄んでいる。
陽射しがやや強いために、遮る雲が欲しくなるくらいだ。
ただただ、真っ直ぐの単調な道が続く。
「あ。」
途中まで歩いて、蓮貴が引き返した場所まで来たことに気付く。
栗色の髪の女の子は、今日は居ない。
僕は二人の間の切ない距離をやるせなく感じつつ、歩を進めた。
―下手に記憶なんかがあるから、色々と面倒なのだ
いつか蓮貴が言っていた言葉の意味が、少し理解できた気がした。
楽しい記憶があればあるだけ、離れて独りになった時、辛くなる。
恐らく、そう言いたかったのだろう。