絶対零度の鍵
身体が汗ばんできた頃、僕は目的地に到達したことに気付いた。


道から少し外れた場所に、木々が囲むように植わった窪みを見つけたからだ。



玄の言ったとおり、大して遠くはなかった。


が、近いという気もしなかった。


それは、見知らぬ土地であるせいかもしれないが。




疲れを感じ始めた身体を休ませようと、木の幹に手を着いて一息吐いた。



額の汗を拭い、下に目をやる。



と。




「お…」



窪みに出来た小さな池が、真っ青な空を反射させている。



その淵を、白い美しい花が囲うように咲いている。



さらにその周りは、薄黄緑の草の色で染められていた。



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