絶対零度の鍵
ふくらはぎに感じていた重みなど吹っ飛んで、僕は急かされるように池のほとりに立つ。


単純に、この場所が好きだ、と思った。


懐かしいとさえ、感じた。


とするならば。


自分はこの場所に縁(ゆかり)があるのかという考えが頭を過ぎる。




まじまじと見てみても、池の水は澄んでいた。



そして、ふと、その脇に咲く、白い花に目をやった。





「これ、確か…」




その花びらに手を当ててみて、呟く。



確か、蓮貴の部屋にもあった気がする。




白い、花…。




「つ…」



そこまで考えた所で、急な頭痛に襲われた。



どうしてだろう。



この花を見るといつも、何か思い出しそうな気がする。

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