絶対零度の鍵

とても、大切なことを。



余りの激痛に、頭を抱えるようにしてその場にうずくまった。


膝が、池の水に当たり、衣服が濡れていく。



このまま、いっそのこと池の中に落ちてしまった方が楽なのではないか―



そんな風に思った瞬間、




「ちょっと…大丈夫?!」




斜面を滑るような音と共に、女の子の驚いたような声が聴こえた。




「しっかりして!」



視界が暗く、ふらふらとする中、僕は女の子が肩を抱き、背中をさすってくれているらしいことに気付く。



すると、どうしてか、発作のように僕を悩ませていた痛みは和らいでいき、浅い呼吸とびっしょりとかいた汗以外は治まった。




「ありがとう…」



懸命にさすってくれている彼女から、やんわりと離れ、御礼を述べると、彼女の顔がはっきりと見えた。
< 526 / 690 >

この作品をシェア

pagetop