絶対零度の鍵
「あ、れ…君は…」
蓮貴に話しかけていた女の子だった。
「…はい、どうぞ。」
彼女は肩から紐でかけていた筒の様なものをぱかっと開けて、僕に勧める。
「え…?」
何かわからずに、首を傾げると、手に押し付けられた。
「水。飲んだほうが良いわよ。」
ぶっきらぼうに、彼女はそう言うと、ぷいとそっぽを向いた。
「あ、ありがと…」
言われるまま、僕は躊躇いがちに口をつける。
自覚していた以上に、僕の喉は渇いていたようで、冷たい水は非常に美味しかった。
「全部、飲んじゃっていいから。」
ごくごくと喉を潤す僕を横目で見ると、栗色の髪の彼女はクスリと笑った。